ストレスって何?

最初に“ストレス”という言葉を使ったのは、生理学者ハンス・セリエ博士でした。1963年にイギリスの雑誌に発表した論文で、『何かしらの刺激が加わったときに人間のからだが適応するプロセス(過程)』を“ストレス”と表現しました。

そもそもストレスとは、外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態のことです。外部からの刺激には、天候や騒音などの環境的要因、病気や睡眠不足などの身体的要因、不安や悩みなど心理的な要因、そして人間関係がうまくいかない、仕事が忙しいなどの社会的要因があります。つまり、日常の中で起こる様々な変化(刺激)が、ストレスの原因になるのです。また、進学や就職、結婚、出産といった喜ばしい出来事も変化(刺激)ですから、実はストレスの原因になります。

まずは簡単なストレスチェックテストで、あなたのストレスタイプを知ろう!

A~Dのチェック項目のうち、もっとも数多く当てはまったブロックが、あなたのストレスタイプです。

TYPE Aあなたのストレスタイプと脳の関係

Aのあなたは、理想と現実を冷静に見極める現実主義者です。
責任感も強く、頼りがいのあるしっかり者です。
ただ、心配性のためプレッシャーに弱いところがあります。
ストレスが強くなると、人が変わったようにヒステリーになることも。

このストレスを感じている人は、脳のノルアドレナリン神経が強く働いています。
外部からの重圧に弱く、ひどい場合はうつ病などになることもあります。

診断結果タイプ “A” だった人は、「外部からのストレス」を強く感じているようです。

外部からのストレスに関わる脳内物質 : ノルアドレナリン

外部からの刺激を強く感じると、脳内ではノルアドレナリンが分泌されます。ノルアドレナリンが過剰に分泌されると「キレやすい」「イライラ」するなど落ち着きがなくなります。さらには「うつ病」「パニック障害」「強迫性障害」「対人恐怖症」などの精神疾患になってしまう可能性もあります。

  部からのストレスは2種類あります 

肉体的に不快な刺激による身体的ストレス
【主な原因】
►寒さや暑さなどの気候による刺激
►痛みやかゆみ、苦しさ
►全身の倦怠感

社会との関りで生まれる外部との摩擦が脳ストレスにつながる
【主な原因】
►職場の人間関係や仕事がうまくいかない
►家族や親戚との不仲 
►子育ての悩み
►友人や隣近所とのトラブル

危機管理をする『仕事脳』はノルアドレナリンがつかさどっている

ノルアドレナリンは「危険」や「不快」などの外部からの刺激に反応し、「仕事脳」の働きを活発にします。状況を判断して最適な行動へと導く役割があります。仕事中や車の運転、スポーツの試合中や試験の前、発表会のときなど、適度な集中力や緊張感が必要な場面で役立ちます。「戦いモード」にスイッチを入れる脳といえます。また危険を察知し、身を守る働きもあります。

TYPE Bあなたのストレスタイプと脳の関係

Bのあなたは、ポジティブで何事にも意欲的。
その反面、チャレンジ精神が強くなりすぎるといつまでも現状に満足できません。
ほしいものが手に入っても満ち足りず、食べても食べても足りないなど、
依存症や摂食障害になる恐れがあります。

このストレスを感じている人は、本能や欲求をつかさどる
脳内のドーパミン神経が過剰に働いていると考えられます。

診断結果タイプ “B” だった人は、「満足できないストレス」を強く感じているようです。

満足できないストレスに関わる脳内物質 : ドーパミン

私たちが何かを欲しいと感じ、行動するとき、脳内ではドーパミンが分泌されています。ドーパミンが過剰に分泌されると、欲望が抑えられなくなり、「買い物依存」「過食症」「アルコール依存」「薬物依存」「ギャンブル依存」などにおちいることもあります。

 自分の欲望がストレスの原因になる 

外からの影響を受けるのではなく、自分自身の内部から生まれるストレスです。人間の欲望にかかわり、「~が欲しい」「~がしたい」と思うのに、それが満たされなかったときに生まれます。見方を変えれば、目標に向かって努力し、やる気につながる「よいストレス」ともいえます。脳が発達したために感じる人間ならではのストレスです。

【主な原因】
►仕事でよい成績を残したい
►テストでよい点を取りたい 
►やせたい 
►恋をしたい
►資格を取りたい 
►おいしいものを食べたい

快感と意欲をもたらす『学習脳』はドーパミンがつかさどっている

ドーパミンが働き、「快感」の興奮をもたらすのが「学習脳」です。脳にとっての学習とは「報酬を前提にして努力する」こと。報酬はお金や物だけではなく、地位や名誉、美しさやかしこさなど様々な「快」とかかわっています。何かを始めるときには欠かせない、意欲にも関係しています。また食欲や性欲などの生存本能にかかわる欲求をもたらし、おいしいものを食べたい、恋人が欲しいと思うとき、ドーパミン神経が働きます。働きが弱まると、食欲や性欲が落ち、活動が行動できなくなることも・・・。

TYPE Cあなたのストレスタイプと脳の関係

Cのあなたは、人と話したり、人のために働くことが大好き。
サプライズイベントなどを企画すると、相手の喜ぶ顔を想像してワクワクします。
けれど、相手が予想した反応を示してくれないと、どっと落ち込んでしまうことも。

このストレスを感じている人は、セロトニン神経の活動が弱まり、
セロトニンが不足している可能性があります。

診断結果タイプ “C” だった人は、「人に認められないストレス」を強く感じているようです。

人に認められないストレスに関わる脳内物質 : セロトニン

「人に認められないストレス」を強く感じるのは、セロトニン神経から出されるセロトニンの分泌が正しく行われていないのが原因です。セロトニンがきちんと分泌されていれば、そのほかの「外部からのストレス」「満足できないストレス」なども軽減されることが分かっています。

 人との気持ちのすれ違いがストレスになる 

「自分が相手のためにした行動が正当に評価されていない」と感じたときに生まれます。「私はこれだけやったのに」という、行き場のないモヤモヤがストレスになります。このストレスは、他人との価値観や立場の違いから生まれるため、自分だけでは解決しにくい点がやっかいです。しかも、家庭や職場など、親しい人とのあいだで日常的に起こります。

【主な原因】
►家族や恋人のために料理を作ったのに、味付けに不満を言われた
►取引先や上司のために休日返上で働いたが、評価されなかった 
►誕生日や記念日に贈ったプレゼントを、気に入らないと突き返された

共感や我慢の心をつくる『共感脳』はセロトニンがつかさどっている

セロトニンが働き、心のバランスを整えてくれるのが「共感脳」です。その名の通り共感にかかわる脳で、動物にはほとんど見られず、人間ならではのものです。共感とは「相手から読み取った感情を自分も感じる」ことです。自分の気持ちを抑え、我慢の心がわいてくることが「共感脳」の働きです。セロトニンが不足すると「外部」「満足」「承認」のストレスがすべて溜まっていきます。反対にセロトニンが過剰に出ると心が静まり、まるで悟りを開いたような達観した心境になります。ところが何事にも動じず無欲になることは、実はつまらない人生かも・・・。適度な意欲や興奮があることも大切です。

TYPE Dあなたのストレスタイプと脳の関係

Dのあなたは、ノルアドレナリンやドーパミンは多すぎず、セロトニンは少なすぎず、
すべての分泌がバランスよく行われている人です。
ショックなことがあっても引きずらない、欲しいものを過剰に求めない、人からの評価を気にしすぎない。
多くの人が、いまあなたのような無色透明の状態を目指しています。

いまの状態は理想ですが、一時的なものになりがちです。
環境の変化で心が動き、ほかのストレスタイプが混ざってしますことも。
無色透明の現状を保てるよう心がけましょう。

知っておこう! ストレスはコントロールできる!

 イライラはコントロールできる 

刺激によるストレスには、大きく2つの種類があります。

◎運動の疲労や熱いものに触ってできた火傷など、からだへの刺激によるものは『身体的ストレス』

◎仕事の成績不振や職場の人間関係、育児の不安などによる心への刺激によるものは『精神的ストレス』

これまで、「精神的ストレス」は「心」が感じるものとして考えられており、対処法もよくわからず、あやふやなイメージがありました。しかし、最新の脳科学研究によって、「身体的ストレス」と同様に、「精神的ストレス」も脳が感じているものだということが明らかになりました。

ストレスが伝わる道のり身体的ストレスと精神的ストレスでは、ストレスの伝わる経路が違うということが最新の脳科学研究でわかりました。

脳がストレスを感じるということは、ストレスを伝える伝達物質と、それを抑える制御物質があるということです。
そのメカニズムがわかれば、精神的ストレスも怖くありません。
これまでため込んでいたイライラは、コントロールすることができるのです。

 ストレスを活かせる人、活かせない人 

じつは日々の小さなストレスが、私たちの生活をうるおしているのです。ノルアドレナリンもドーパミンも、適度な分泌であればよい刺激になり、仕事や勉強の能率を上げ、生きる充実感につながっています。

◎ ストレスを活かせず、デメリットをこうむる人 ◎

►呼吸が浅くなり、疲れやすくなる
►よく眠れなくなり、つねに眠気を感じる
►姿勢が悪くなる
►緊張状態が続いて本来の能力を発揮できない
►物事への意欲を失う

►無気力になり、勉強や仕事に支障がでる
►快楽を必要以上に求め、買い物やタバコ、アルコールなどの依存症になる
►免疫力が低下し、胃潰瘍や高血圧、糖尿病などのからだの病気にかかりやすくなる
►ストレス状態が長く続くと、うつ病などの心の病気になる

◎ ストレスを活かして、メリットを得られる人 ◎

►集中力が高まり、仕事や勉強の効率が上がる。スポーツでは、最高のパフォーマンスができる
►やる気が引き出され、志望校合格やプレゼンテーション成功など、目標達成の原動力になる
►営業成績のアップなどで期待以上の快感を得ると、さらなる意欲につながる

►冷たい水での洗顔など、短時間の身体的ストレスは気分のリフレッシュにつながる
►火事や事故などで危険を感じたときに、注意を向けて身を守る
►外からの刺激が新たな興味を引き起こし、生きる楽しみにつながる

ストレスから逃げることはできません。でも、メリットとデメリットを知って上手につき合うことができれば、人生はもっと豊かになるでしょう。

PAGE TOP